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2015年12月10日木曜日

CIA 特殊工作マニュアル:「水洗トイレの詰まらせ方」

コーランを無視すれば、たとえば CIA の特殊工作マニュアルと彼ら(テロリスト)はどこが違うのか。水洗トイレの詰まらせかたにいたるまで、日常生活をいかにかき乱すかを細かくニカラグアのコントラ反革命軍に指示した CIA のマニュアルは、まさに同じ種類のものではないか──違うとしたらせいぜい、もっと臆病ということだけなのでは?(ジジェク「現実界の砂漠にようこそ」)

◆CIA のマニュアル(PDF)



たしかにこの「とてもわかりやすい」マニュアルのなかに「水洗トイレの詰まらせかた」の頁がある。





イスラム国もフセイン政権の元情報将校が裏にいるという話がある(フセイン自身が情報部出身だ)。

今年4月、ドイツのシュピーゲル誌に、ISの戦略を立案していたのはイラクの旧フセイン政権の元情報将校だった、という特集記事が出た。「ハジバクル」と呼ばれた元将校が2014年1月、シリア北部のタルリファトで自由シリア軍に家を襲撃されて殺害されたが、その自宅から31ページの機密文書を入手し、そこにISの戦略が記されていたという。

 同誌で紹介されている内容は、まず各地にイスラムを広める宗教センターを開き、そこに集まってくる人を使って、その土地の有力者や有力家族のメンバーや資金源などの情報を徹底的に収集し、イスラムの教えに反している行動などの弱みも押さえる。イスラムの有力者と近づき、時には脅したり、誘拐したり、暗殺したりして、地域を支配していく。そんな情報機関ならではの方法が詳述されていたという。

 この話はイラクの旧情報機関の地域支配のノウハウが、ISの地域支配として生きているということを示すとともに、そのディテールが興味深い。シュピーゲル誌の記事からは、イラク戦争後に米占領体制を失敗させるためにテロを始めた旧政権の治安情報機関メンバーが、いまISの中で支配地域を維持する役割を果たしているという流れが見える。
ただし、ISの情報機能を元フセイン体制の治安情報機関が担っていると言っても、ISを支配しているということは意味しない。情報機関にとっては国が民主制か、独裁制か、カリフ制か、は関係ないことである。ISにはカリフ制を唱えて、厳格なイスラム法に基づいて統治しようと考える支配的組織または集団がいて、元イラク情報機関のメンバーは、その支配的意思を実現するために、民衆や部族を支配する地域対策などで役割を担っていると考えるべきだろう。彼らは冷徹な現実主義者であり、イスラムの実現さえ信じてもいないかもしれない。

 ISはなぜ、残酷なイメージを誇張し、それをインターネットで発信するのか。あえて欧米を敵に回すような宣伝手法をとるのか。それもまた、ISの戦略であろう。90年代には米国による封じ込め策の下にありながら、度々米国を挑発し、緊張状態を作りながら、国内を引き締めた旧フセイン体制の常套手段が連想される。空爆だけで根絶されることはないという計算や、米欧が空爆に結束すればするほど、イスラム世界との亀裂が広がるとの計算もあるだろう。

 米欧にとってISとの戦いは、米国の無謀なイラク戦争が生んだ「反米過激派」という怪物との戦いであり、それを支える情報機関というフセイン体制の亡霊との戦いでもある。しかし、怪物や亡霊が暗躍するのは、イラクやシリアのスンニ派の民衆の怒りや絶望をエネルギーとしているからである。米欧やロシアの空爆の激化が、IS支配地域にいる民衆の絶望を深めることになれば、さらなる泥沼へと進むだけとなろう。(「イスラム国」を支える影の存在、川上泰徳

きっとyoutubeで西側諸国を脅かす仕方等のマニュアルがあるのだろう。


Haji Bakr

こういうことを記すと、すぐさま陰謀論云々といってくるヤツがいるので、先に書いておけば、歴史や政治とは陰謀論にみちみちている。たとえば蓮實重彦の『帝国の陰謀』を読んだらすぐさまそれがわかる(参照)。「能ある鷹は爪を隠す」というように、陰謀論にまったく思いを馳せない輩は、たんなる無能にほかならない。

というわけで、ここでなぜか、ジジェクの顔写真を「ハジバクル」と並べておこう。





ジジェクならもうすこし緻密なマニュアルを作るのではないか。


◆Conversations with Ziiek Slavoj Zizek and Glyn Daly より私訳( 邦題『ジジェク自身によるジジェク』)

大統領 president 選? いやまずは大統領職 presidency 選だよ、大統領選じゃない。私は5番目だった。負けたんだ。けれど気にしなかったね。政治のポストでは、文化政治のたぐいには全く興味がなかったからな。興味があった唯一のことはーー古い話だがジョークではないよーー、内務省の大臣か諜報部の長だった。馬鹿げてきこえるかい? でもどちらも真剣に考えたんだ。たぶん、望んだらどちらかのポストを得たはずだ。(……)

けれど、友人たちが何て言ったと思う? ーーすばらしい、完璧だ! ただ一週間前に言ってくれ、そうしたら国から逃げ出すから、と。

このアイデアは少し馬鹿げていたさ。でも真剣だったんだ。けれど私はすぐに分かった、それは24時間の仕事だと。…とすれば理論的なことを続けることはできない。そして理論をやめるのは私にはまったく無理だ。だからそれで事は終わったってわけさ。


ーースロベニアの大統領や諜報部長といっても、日本でいえば地方都市の長のようなものだ。あの国は、人口200万人ほどしかないのだから。